支援機器とは
支援機器の用語について※
障害者等を支援する機器については、旧来、英語では、「Technical Aids」が使われ、日本語としては 「福祉機器」や「福祉用具」と呼ばれていました。
その後、1990年代後半より、「Assistive technology」と 呼ぶようになってきたものの、「technology」の日本語訳に「機器」がないため、「支援技術」と訳す混乱を生じていました。
一方、ICF の概念として、機器類は環境因子と捉えられており、「products and technology(製品と用具)」と表記されることから、ICF の立場に立った福祉機器を表す英語は「Assistive products and technology」となっていました。
ISO(国際標準化機構)においては、technology では device と software 両方を表せないため、「Assistive Products」を使用することとなりました。
以上のように、英語表記の変遷があり、日本においては、平成5年に成立した「福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律」において「福祉用具」という用語が定義付けされ、広く使われていました。
しかしながら、従来から使われている「福祉機器」や、「Assistive Products」を直訳した「支援機器」も使用される場面がありました。
そこで、こちらのプラットフォームでは、福祉用具をより広く捉える概念として、厚生労働省 社会・援護局、生活支援技術革新ビジョン勉強会の報告書、「支援機器が拓く新たな可能性」で使用された「支援機器」という用語を統一して用いています。
この「支援機器」という用語には、従来の「福祉用具」の枠にとどまらず、今後の新たな可能性を拓く意味が込められています。
※厚生労働省 社会・援護局, 生活支援技術革新ビジョン勉強会報告, 支援機器が拓く新たな可能性 ~我が国の支援機器の現状と課題~, 2008年3月.
ISO9999:2016での定義
ISO 9999における「assistive product」の定義
「支援機器」という新しい用語を検討する際の背景の一つとなっているのが、ISO 9999(支援機器の分類と用語)です。
ISO 9999では、「assistive product(支援機器)」を次のように定義しています。この定義は、本プラットフォームで用いている「支援機器」の概念に最も近いものとされており、World Health Organization(WHO)が定めたInternational Classification of Functioning, Disability and Health(ICF)の用語を基に構成されています。
assistive product(支援機器)とは
障害のある人が使用する、または障害のある人のために使用される用具・器具・機器・ソフトウェアを指します。
それが特別に製造された製品であるか、一般に販売されている汎用製品であるかは問いません。
さらに、次のいずれかに該当するものとされています。
- ・社会参加を支えるもの
- ・心身機能や身体構造、活動に関して、保護・支援・訓練・測定・代替を行うもの
- ・機能障害、活動制限、参加制約を予防するもの
ただし、以下は含まれません
- ・支援機器を設置するための補助的な用具類
- ・医薬品
- ・医療専門職のみが使用する機器
- ・介助者や盲導犬、読唇など、機器によらない支援方法
- ・体内に埋め込まれる機器
- ・財政的支援(給付制度など)
ISO9999とは
※ISO 9999は、支援機器を世界共通の基準で整理・分類するための国際規格です。
世界中で使われているさまざまな支援機器を、その役割や機能に応じて分かりやすく分類し、共通の用語で定義しています。
この規格は、国際標準化機構(International Organization for Standardization:ISO)が定めており、支援機器に関する国際規格を担当する専門委員会(TC 173 福祉用具)、その傘下の分類と用語を担当する分科委員会(TC 173/SC 2 分類と用語)によって、時代や技術の進展に合わせて継続的に見直し・改訂が行われています。
ISO9999の最新動向
先述のTC 173/SC 2 では、支援機器の定義に関する重要な改訂が進められ、ISO 9999 自体も改訂が行われています。
ISO 9999は1992年に第1版が発刊された後、何度か改訂が行われ、2022 年5 月に最新版である第7版ISO 9999: 2022 Assistive products — Classification and terminologyが発刊されました。
その前の第6版のISO 9999: 2016のタイトル「Assistive products for persons with disability — Classification and terminology」は、第7版ISO 9999:2022 では「Assistive products — Classification and terminology」となり、「persons with disability」の文言が削除されるなど、WHO-ICF との整合性を高める改訂が行われました。
一方、ISO 9999の大分類項目06「義肢装具」は最新版(ISO 9999: 2022)では第5版以前と同じ「Orthoses and prostheses」に戻るなど、利便性を優先した改訂も行われました。
なお、ISO 9999: 2022が発刊された後も更なる改訂作業が進んでおり、改訂作業のための新規プロジェクトが立ち上げられた段階です(2026年3月現在)。
その他の関連する用語と定義
その他の支援機器に関連する「用語と定義」として、以下が挙げられます。
- • 福祉用具法(1993年施行)
【福祉用具】 - 心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障のある老人又は心身 障害者の日常生活上の便宜を図るための用具及びこれらの者の機 能訓練のための用具並びに補装具をいう。
- • ISO9999:2022支援機器の分類と用語
【assistive product】 - 人の生活機能を最適化し、障害を軽減するもの。
※用具、器具、機器、ソフトウェアを含む。
※特別に製造されたものであるか、汎用製品であるかは問わない。 - • WHO国際生活機能分類(ICF)
【assistive products and technology】 - 障害のある人の生活機能を改善するために改造や特別設計がなされた、あらゆる製品、器具、装置、用具。人の体内に装着したり、身 につけたり、身の回りで使うものを含む。
支援機器の位置づけ ーICFをベースに
国際生活機能分類 ICF
支援機器は、障害のある方の「生活機能」を支える大切な手段のひとつです。
生活機能とは、筋力や感覚、認知機能といった心身の働きだけでなく、歩く・食べる・着替えるなどの日常生活の活動(ADL)、さらに社会参加までを含む広い概念です。
これまで医療や福祉の現場では、主にADLが重視されてきました。しかし、ADLだけでは生活全体を十分に捉えることはできません。
そこで、WHOが2001年に公表した「ICF(国際生活機能分類)」という枠組みが用いられるようになりました。
ICFでは、健康を「心身機能」「身体構造」「活動と参加」といった生活機能の側面から捉え、それらが「環境因子」や「個人因子」の影響を受けると考えます。支援機器は、この環境因子の重要な要素のひとつです。
たとえば、歩くことが難しい場合でも、車いすや装具、杖などの支援機器を活用することで移動が可能になり、日常生活や社会参加の機会が広がることがあります。
ICFは、障害を「できないこと」として捉えるのではなく、生活機能と環境との関係として捉える考え方です。この視点に立つことで、支援機器がどのように生活機能を支え、暮らしを広げるのかを、より包括的に理解することができます。
ICFの最新動向
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支援機器の位置づけ
支援機器は、ICF(国際生活機能分類)において「環境因子」に位置づけられています。
環境因子は、心身機能や身体構造、活動や参加に影響を与える要素であり、生活を支える「促進因子」として働くこともあれば、状況によっては妨げとなることもあります。本プラットフォームでは、支援機器を主に生活機能を高める促進因子として捉えています。
多くの支援機器は、日常生活や社会参加といった「活動・参加」に直接働きかけます。
そのため、支援機器の開発や普及・活用にあたっては、利用者の心身機能の状態と、実現したい生活場面の両方を踏まえて検討することが重要です。
支援機器の活用により、これまで難しかった活動が可能になったり、参加の幅が広がったりすることが期待されます。
支援機器の開発や普及・活用では、利用者本人だけでなく、介助者や使用環境との適合も含めて総合的に判断し、生活全体の中で最適な形を目指すことが求められます。
ICFの環境因子 第1レベルまでの分類
支援機器は、以下の環境因子第1レベルの中で、第1章に分類されます。
環境因子 environmental factors
第1章 製品と用具 products and technology
第2章 自然環境と人間がもたらした環境変化
natural environment and human-made changes to environment
第3章 支援と関係 support and relationships
第4章 態度 attitudes
第5章 サービス・制度・政策 services, systems and policies
ICFの環境因子 第2レベルまでの分類
また、より詳細な第2レベルでは、以下のように活動と参加の項目に基づいた分類がなされています。
・製品と用具 products and technology
- ・e110 個人消費用の製品や物質
products or substances for personal consumption - ・e115 日常生活における個人用の製品と用具
products and technology for personal use in daily living - ・e120 個人的な屋内外の移動と交通のための製品と用具
products and technology for personal indoor and outdoor mobility and transportation - ・e125 コミュニケーション用の製品と用具
products and technology for communication - ・e130 教育用の製品と用具
products and technology for education - ・e135 仕事用の製品と用具
products and technology for employment - ・e140 文化・レクリエーション・スポーツ用の製品と用具
products and technology for culture, recreation and sport - ・e145 宗教とスピリチュアリティ儀式用の製品と用具
products and technology for the practice of religion and spirituality - ・e150 公共の建物の設計・建設用の製品と用具
design, construction and building products and technology of buildings for public use - ・e155 私用の建物の設計・建設用の製品と用具
design, construction and building products and technology of buildings for private use - ・e160 土地開発関連の製品と用具
products and technology of land development - ・e165 資産 assets
- ・e198 その他の特定の,製品と用具
products and technology, other specified - ・e199 詳細不明の,製品と用具
products and technology, unspecified
支援機器の概念モデル オーファンプロダクツとアクセシブルデザイン
オーファンプロダクツとアクセシブルデザイン
支援機器の概念を考える際には、障害のある人のために特別に開発された機器(いわゆるオーファンプロダクツ)だけでなく、一般に販売されている製品であっても、障害のある人の利用に配慮して設計されたアクセシブルデザイン製品を含めて捉えることが重要です。
つまり、支援機器は「特別な製品」に限定されるものではなく、誰もが使いやすいよう工夫された製品も含めて広く考える必要があります。
オーファンプロダクツとは
オーファンプロダクツは、特定の障害のある人に必要とされる、利用者数の少ない福祉機器の総称です。
一人ひとりへの適合性が重視される点が特徴で、幅広い人に共通して使いやすい設計を目指すユニバーサルデザインとは対照的な概念とされています。
アクセシブルデザインとは
アクセシブルデザインは、多様な利用者が、さまざまな状況の中でもできるだけ使えるようにすることを目指した設計を指します。
具体的には、次のような考え方によって実現されます。
- ・できるだけ多くの人が、修正や改造なしで利用できるように設計する
(ユニバーサルデザインの考え方) - ・利用者に合わせて調整・改造できるように設計する
(操作部の変更やカスタマイズが可能であること) - ・インターフェースを標準化し、支援機器と接続・併用できるようにする
【参考】ユニバーサルデザイン
支援機器に関連する他の概念として、ユニバーサルデザインがあります。
ユニバーサルデザインとは、年齢や能力に関わりなく、全ての生活者に対して適合するデザインを指します。
この概念は、アメリカノースカロライナ州立大学ユニバーサルデザインセンターのRonald L. Maceが、従来のバリアフリーの考え方に代わるものとして提唱しました。
ユニバーサルデザインの考え方が広く注目されるようになった背景には、1990年代初頭に米国で成立したAmericans with Disabilities
Act ~障害を持つアメリカ人法(ADA法)があります。
この法律の成立を契機に、社会全体で「誰もが利用しやすい環境づくり」への関心が高まりました。
ユニバーサル・デザインの7原則
- 原則1:誰にでも公平に利用できること
- 原則2:使う上で自由度が高いこと
- 原則3:使い方が簡単ですぐわかること
- 原則4:必要な情報がすぐに理解できること
- 原則5:うっかりミスや危険につながらないデザインであること
- 原則6:無理な姿勢をとることなく、少ない力でも楽に使用できること
- 原則7:アクセスしやすいスペースと大きさを確保すること
- + 価格妥当性があること
【参考】デザイン・フォー・オール
支援機器に関連するもう一つ他の概念として、デザイン・フォー・オールがあります。
デザイン・フォー・オールは、できるだけ多様な能力や状況にある人が利用できる製品・サービス・システムを設計する考え方です。
具体的には、次のような要件を満たすことが求められます。
- ・福祉機器を使用したり、製品を改造したりしなくても、幅広い利用者がそのまま使える十分な柔軟性をもつ市販品であること
- ・直接使用が難しい場合でも、福祉機器を併用することで利用できるよう配慮されている市販品であること
【参考】共用品
共用品は、日本で提唱された概念です。
共用品は、身体的な特性や障害にかかわりなく、より多くの人々が共に利用しやすい製品・施設・サービスを指します。
共用品の5原則
- 1.多様な人々の身体・知覚特性に対応しやすい
- 2.視覚・聴覚・触覚など複数の方法により、わかりやすくコミュニケーションできる
- 3.直感的でわかりやすく、心理的負担が少なく操作・利用ができる
- 4.弱い力で扱える、移動・接近が楽など、身体的負担がすくなく、利用しやすい
- 5.素材・構造・機能・手順・環境などが配慮され、安全に利用できる
支援機器の開発・活用の促進モデル
WHO/UNICEF 支援機器グローバルレポート
WHOとUNICEF では、2022年5月に、支援機器の必要性とアクセスに関する世界報告書、グローバルレポートを発行しました。
このレポートには、支援機器の開発・利活用の促進の参考となる以下のような項目が記載されています。
詳細は、リンク先のレポートをご参照ください。
- • 支援機器の理解
- • 支援機器へのアクセス状況の測定
- • 支援機器の課題の特定
- • 支援機器システムの促進
- • 人道的危機における支援機器の備え
- • 環境の整備
- • 今後に向けて
WHO-GATE 5Pフレームワーク
支援機器が誰にでもどこでもアクセス可能になる世界を目指すため、世界保健機関(WHO)では、GATEと呼ばれるイニシアチブ、グローバル協力コミュニティを組織しています。
GATEは、支援技術へのアクセスを強化するためのWHO-GATE 5Pフレームワークを中心に活動しています。
5Pフレームワーク
- ・People
- 支援機器が必要な人、その家族、支援者ネットワーク、コミュニティが、支援機器の利用について認識し、情報を収集し、そして支援機器を利用できるようにする。また、支援機器開発・利活用システムのあらゆる過程に関われるようにする
- ・Policy
- エビデンスに基づき、領域横断的な支援機器政策と資金調達の仕組みを確立し、性別、年齢、文化的配慮に留意しつつ、すべての利用者が公平に支援機器を利用できるようにする
- ・Products
- 優先度の高い支援機器及び交換部品に対して、利用者個々の状態と利用場面に適した形、手頃な価格で、一貫性のある利用を可能とする。それらは、効果的な調達と、保守・修理・環境配慮型の製品ライフサイクルにより支えられる
- ・Provision
- 保健、教育、高齢者ケアサービス、社会福祉を優先的に考慮し、地域から三次医療サービスまでの連携パスを含め、関連するセクタの中に支援機器の供給を位置づける。特に遠隔地やサービスが行き届いていない地域に重点を置く
- ・Personnel
- 医療、児童への早期介入、教育、社会福祉、高齢者ケアサービスなどの関連する各セクタにおいて、適時かつ高品質で、利用場面に適応し、パーソン・センタードな支援機器サービスを支援・提供する人材の能力を向上し、多様化する
厚生労働省社会・援護局生活支援技術革新ビジョン勉強会報告-支援機器が拓く新たな可能性-
2007年に厚生労働省社会・援護局が中心になって行われた「生活支援技術革新ビジョン勉強会」では、支援機器の開発と普及に向けて、課題の洗い出しが行われました。また、支援機器の開発や普及を促進するために、以下の7箇条が策定されました。
~「夢」の実現に向けた7箇条~
- • 理想は高く
- • “井戸端会議”が未来を拓く
- • 利用者サイドから考える
- • ユニバーサルな視点に立つ
- • 「適合」が鍵を握る
- • 人材を育てる
- • 国際的な視野に立つ
支援機器開発・利活用ハートサイクル
前述の生活支援技術革新ビジョン勉強会の報告書を基に、支援機器の開発と普及の流れとステークホルダー(利害関係者)の関係を示すハートサイクルの図が作成されました。
こちらの図は、関係者が利用者を中心に、このサイクルをスムーズに回すことが重要であることを表しています。